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トンネル時間の分布とその統計的な性質

日時: 2001/07/03 火 16:30-18:00
講師: 原 光一郎 氏 早大
題目: トンネル時間の分布とその統計的な性質
場所: 55N-02-応物・物理会議室

量子力学の基礎的な未解決問題のひとつとして、いわゆるトンネル時間の問題がある。波動として振舞う粒子が、古典的にはエネルギー障壁により禁じられた領域に侵入する現象はトンネル現象として知られているが、トンネル時間とは、粒子がこの障壁を通過するのに必要な時間のことである。この問題について、古くからたくさんの議論が行われて来た。特に最近では、エレクトロニクス技術や中性子散乱実験などの著しい向上により、実験的なアプローチが可能になるに従って、トンネル時間やその周辺の議論が活発に行われている。しかしながら、量子力学の枠組で考えている以上、トンネル時間と言う料は本来、統計的な分布を有することが期待されているにも関わらず、トンネル時間に関する議論のほとんどは、その平均値についてしかなされていない。

ここでは、一次元箱型ポテンシャルによる波束の散乱問題を考え、ランダムサンプルパスにより量子力学を再現するネルソンの量子力学を用いてトンネル時間の分布を構成した。そして、その分布の平均や分散から、分布の持つ統計的な性質について調べた。その結果、トンネル時間の偏差の平均値に対する振舞いが、 translucentな(ポテンシャルが薄い)時と、opaqueな(ポテンシャルが厚い)時で変わってくることがわかった。また、トンネル時間の分散のプランク定数依存正についても調べ、量子・古典対応との関係についても議論をする。

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