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レーザー場のデコヒーレンスによる自発的選択則

日時: 1999/07/13 火 16:30-18:00
講師: 藤居 三喜男 氏 早稲田大学
題目: レーザー場のデコヒーレンスによる自発的選択則
場所: 55N-02-応物・物理会議室

レーザー系とは、ポンピングによる共振器内へのエネルギー流入と電場を取り出すときに生じる共振器外へのエネルギー流出が時間的に一定な、非平衡定常状態にある開放系である。このような一定のエネルギーの流れを受けながら、共振器内のレーザー場の系とレーザー原子の系は相互作用しつつ時間発展する。

レーザー理論において、定常状態は場の詳細釣り合いが成り立ち光子数分布が変化しない状態として定義される。スカリーとラムは定常状態のレーザー場として、詳細釣り合いを満たし、かつ光子数状態を基底にとった密度行列成分がすべて実数となるような特定の状態を仮定して、レーザー場の高いコヒーレント性を説明することに成功した。

ところが理論上は、詳細釣り合いを満たす場は《スカリー・ラムの場》以外に無数に存在することが示される。では、なぜレーザー場を説明するのに《スカリー・ラムの場》ただ一つで十分なのか、さらに《スカリー・ラムの場》以外の場は観測可能か、これを論じるのが本研究の目的である。

いまレーザー場の系を注目する《システム》として観測すると、《環境》である他の系からデコヒーレンスを受けるために、レーザー場は初めに純粋状態であっても時間とともに混合状態へとむかう。したがって、たとえ非平衡定常状態であっても電場の期待値は必ず減衰する。本研究では、純粋状態から混合状態へと向かう速度、つまり電場の期待値の減衰速度が場の初期状態に大きく依存することを示す。ただしここでは、場の初期状態として詳細釣り合いを満たすスクイーズド状態を考える。

結論として、標準的なQ値のレーザー共振器内では、W. H. Zurek らが提唱するデコヒーレンスによる量子状態の選択則 《the predictability sieve》 により 《スカリー・ラムの場》のみが観測可能な状態として選択されることが示される。さらにQ値が非常に高いレーザー共振器内では、詳細釣り合いを満たしてはいるが《スカリー・ラムの場》とは異なる《スクイーズド状態の場》が準安定な状態として観測可能であることが示される。

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