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量子エネルギーテレポーテーション

日時: 2009/01/20 火 16:30-18:00
講師: 堀田 昌寛 氏 東北大学
題目: 量子エネルギーテレポーテーション
場所: 55N-0202 応物・物理会議室
量子情報の分野のおいて、ベネットらのよって提案された量子テレポーテーション (QT) は重要な概念となっている。QT では空間的に離れた 2者 A とB が持っている量子系が、スピン 1重項状態のように量子的にもつれた状態にある場合を考える。QT の驚くべきことは、A がある量子系の任意の量子状態を Bに A と B の局所的操作と古典通信 (Local Operations and ClassicalCommunication, LOCC) だけ送ることができる点である。この性質ために将来の量子情報ネットワークにおいても QT は重要な働きをすると期待されている。一方従来の QT は量子情報は送信できるが、転送される励起状態のエネルギーそのものは送ることができない。しかし、もしエネルギーも LOCC で送信できれば、任意の励起状態をエネルギーを受信地で調達することなくテレポートできることになり大変有用である。ではこのようなことは可能なのだろうか。答えは驚くべきことに YES である。スピン鎖系や量子場の基底状態がもつ量子もつれを使用して、因果律や局所的エネルギー保存則を壊すことなく LOCC のみでエネルギーを転送できるプロトコルを今回提案する。スピン鎖系を例にとると、離れた位置にいる A と B が基底状態(これは何もない状態に対応する)にあるスピン鎖の端点にそれぞれいるとする。 それぞれのスピン鎖に対して、A が基底状態にエネルギーを注入しながら自分のスピンに局所的量子測定を行ってその測定結果を得る。A は B にその古典的測定結果を古典通信路で相手に知らせ、B はその結果に依存した局所的量子操作を自分のスピンに作用させる。この過程において Bはスピン鎖系からエネルギーを集団平均の意味で取り出すことができるプロトコルになっている。この新しいプロトコルでは励起した物理的媒体を直接送ることなく、古典情報のみを伝達することで局所的基底状態のスピン鎖からエネルギーを取り出せるために、この輸送過程では熱の発生を抑制することができる。このような特性からナノマシン等のパワー源への応用も期待される。また発表では量子場の真空の量子揺らぎを用いたエネルギー転送プロトコルも議論する予定である。このプロトコルでは量子揺らぎの局所的 POVM 測定と測定結果に依存した局所的スクィージング操作を用いることで、離れた位置にあるエネルギーを有効的な意味で転送して使用することができる。

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