English SET NAMES utf8

Mutually Unbiased Bases 及び Mean King Problem について

日時: 2006/02/15 水 16:30-18:00 (曜日注意)
講師: 木村 元 氏 東北大
題目: Mutually Unbiased Bases 及び Mean King Problem について
場所: 55N-02-応物・物理会議室

有限量子準位系では位置や運動量のような正準交換関係を満たす共役な物理量のペアは存在しない.その代わりに,Mutually Unbiased Bases (以後MUB) と呼ばれる正規直交基底間に課せられるある条件を持つ固有ベクトルを持つ物理量のペアは存在して,有限次元版の共役な物理量と考えられている.

この概念は状態決定問題に用いることもでき,d準位系において,--- MUBの集合は高々d+1個であるが --- d+1個のMUBの測定が量子状態の最適決定を与えることが示されている.ところが実際にd+1個のMUBが存在するか否かは,現在もなお未解決な問題であり,組み合わせ論などの数学と密接な関係を持つことが知られ,数学側からも盛んにチャレンジされている問題の一つとなっている.特に,(直交)ラテン方陣と呼ばれる数学の問題は,直交する最大の個数の問題がMUBのそれと類似した性質を持っており,何らかの数学的連関を持つものと期待されていた.

最近,これに対する一つの解答が与えられ,MUB測定に関するMean King Problemと呼ばれる問題で,その解と直交ラテン方陣の最大数がd+1個であることの等価性が示された.ここでMean King Problemとは,名前のとおり意地悪な王様が物理学者のAliceに与える問題であり,Aliceは問題の解決を行わない限り死刑にされてしまう,という具合にしばしば童話風に説明される問題である(詳細はセミナーにて説明する).ところで(直交)ラテン方陣の問題は一部解決されており,dが素数の冪次元でない場合 (例えば d = 6),最大数がd+1に届かない場合が知られている.すなわち,この次元の場合,Aliceは問題解決が不可能となって死刑になる可能性が生じてしまう.

本セミナーでは,実はこの結論を物理的に回避する方法があることを指摘し,その結果任意のd準位系において,Mean King Problemの解が常に存在することを示す(すなわち,Aliceは助かる!).それと同時に,数学的にはMean King Problemの解と関連を持つのは,直交ラテン方陣ではなく,組み合わせ論でorthogonal arrayと呼ばれる概念であることを指摘する.

item セミナー・コロキウム 2024 2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997