Japanese SET NAMES utf8

一粒子分布におけるクーロン効果と高エネルギー原子核衝突による中間子生成の時空構造

Date: Tuesday, April 28, 4:30pm-6:00pm
Speaker: Dr. Takeshi OSADA Tohoku Univ.
Title: 一粒子分布におけるクーロン効果と高エネルギー原子核衝突による中間子生成の時空構造
Room: 55N-02-Conference Room of Dept. of Appl. Phys. and Dept. of Phys.

重い原子核を光速に近い速度まで加速し,衝突させることで,温度 150 MeV,約 10^{12}K の状態もしくは,密度が通常の原子核の約5倍程度の物質を作り出せるかも知れない.これらの高温もしくは高密度状態においては,ハドロン内に閉じ込められている,クォークやグルオンが有限な領域内を,有限な時間,自由に運動することができる,クォーク・グルオン・プラズマ状態の生成の可能性も指摘されている.

最近,核子あたり約 200GeV まで加速された,硫黄や鉛の原子核ビームを用いた実験で,中心ラピディティ領域に生成される π中間子イールドの比 π^-/π^+ が横運動量の大きさの関数のとして観測された.特に,質量数が大きい鉛の原子核衝突では,横運動量の小さな領域において,イールド比が1から大きく外れて著しく増大することが,実験的に明らかとなり,大きな注目を集めている.

この観測事実を説明する,1つの可能なアイデアとして,クーロン効果を挙げることが出来る.これは原子核の衝突反応の際(多数の核子・核子非弾性散乱の結果),大きく運動量を失った核子等の集合(荷電核物質)が現れ,これと,生成された π^+ や π^-との間に働く,クーロン終状態相互作用として,イールドの増大を説明する試みである.この場合,クーロン相互作用を正確に取り扱うことにより,π^+,π^- が生成された領域のサイズや, 荷電核物質の電荷(核子の stopping power の目安となり得る)に関する情報を得ることが出来る.また,その結果は,高エネルギー原子核衝突における,反応機構を解明する上で,重要な手がかりとなることが期待される.

最近,我々は Classical source current 形式を用いて,クーロン効果の定式化を試みた.そこでは,π生成源に対しては,良く知られている幾つかの性質(円筒状に変形,縦方向膨張等) を考慮して,イールド比 π^-/π^+ の振舞いを詳しく調べた.今回は,このクーロン効果の問題の定式化から,最近の実験データの解析結果まで,詳しく報告する予定である.

item SEMINARS/COLLOQUIA 2024 2023 2022 2021 2020 2019 2018 2017 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997